廃泥処理

はじめに

泥水についての最後で、泥水の処理の話をしましたが、泥水は一種の化学製品で、実にたくさんの種類の化学物質が入っています。
それらを取り除き、きれいな水にするってなかなか大変な作業なのですが、どんなに難しくてもそれをやらないと、石油を掘削することはできません。

処理の方法

泥水は多くの化学物質を含む水溶液ですが、要はそういう化学物質と水とを分離すればいいんわけです。
化学物質は産業廃棄物として別途処理し、水は再使用する。完全に不純物が除かれていれば海や河川に放流することも可能になります。

実は廃泥処理というと、あたかも使い終わった泥水だけを処理するように思われるかもしれません。掘削現場では泥水を含む廃水は泥溜(どろだめ)と呼ばれる大きな容器に貯めておきますが、ここには泥水のほかに現場で使ったいろいろな水も集まってくるようになっています。
掘削に使われる装置(リグ)やその他の機器類を洗ったときの油などで汚れた水、機械の冷却水、生活廃水や雨水・雪溶け水などもあり、これらによって泥水成分はかなり薄まっている上、泥水成分以外のものも含まれています。これらをまとめて坑廃水といっていますが、実際にはこれを処理することになります。

量的にもかなりになり、現在、この坑廃水を処理する方法として、そのままの状態で泥水成分などの固形成分を沈殿させる方法と、予め水を大部分蒸発させて固形分を濃縮してから沈殿させる方法があります。

凝集沈殿(分離)法

まず、坑廃水をそのまま使って化学物質などを沈殿させて分離する方法です。
普通、水に溶けているものは、それが溶けていられない環境になると分離します。
たとえば、温かい水に食塩を出来るだけたくさん溶かして冷却すると、食塩の結晶が分離します。
冷やすことによって溶けていられない環境になったわけです。
物質が一定量の水に溶ける量は、物質毎に温度によって決まっており、普通は温度が高いほどたくさん溶けるため、温度を下げると析出してきます。(再結晶)
これを繰り返すと不純物が取り除かれその物質の純度を高めることができます。

もう一つ、溶けている物質を沈殿させる方法として別の物質を加え両者を反応させ、水に溶けないものを生成させて、沈殿させる方法があります。

たとえば、食塩でいえばその水溶液に硝酸銀の水溶液を加えると塩化銀が生成しますが、これは全く水に溶けないのですべて沈殿します。これを利用して、あらかじめ濃度のわかった硝酸銀水溶液を加え、生成した沈殿の重量を測ると食塩水の濃度を知ることができます。(沈殿滴定法)

では、泥水も冷やしたり、成分と反応して不溶物を作るものを加えたりすれば良いのでは?と考えてしまいますが、泥水にはいろいろな化学物質が含まれており、泥水成分はかなり薄まっていて量も多いため、冷却はとてもできないうえ、出来たとしても沈殿してくるものはほとんどありません。

そこで、泥水のようにいろんな成分が含まれているものから、それらを沈殿させる方法として凝集沈殿法というのが使われています。
凝集分離ともいいます。
つまり水中の物質を寄せ集めて塊にして沈殿させる方法です。
凝集沈殿させるには、凝集剤という薬剤を坑廃水に加える必要があります。

凝集沈殿法の説明の前にコロイドの説明を少ししなければなりません。
コロイドとは、物質が0.1~0.001マイクロメートル程度の微粒子となって水などの液体、固体や気体の中に分散している状態のことをいいます。1マイクロメートルは1mmの千分の一の長さなので、コロイド粒子の大きさは1mmの一万分の一から百万分の一ということになります。

普通の顕微鏡でも見ることは出来ない大きさで、たとえば水の中などでは一見溶けているように見えますので、コロイド溶液という言い方をしますが、実際は粒子が懸濁しているのです。
実は泥水もコロイド溶液の一種なのです。

 

コロイドの例は我々の身近に結構たくさんあります。例えば、デンプン・寒天・卵白・マヨネーズ・牛乳などの食品、膠(にかわ)、スプレー式殺虫剤などがそうです。

空が青いのは空に浮遊しているコロイドの塵粒子に太陽光のうち波長の短い青い光が散乱しているからのです。

では、コロイド状態の泥水を沈殿分離するにはどうするのかというと、コロイドが存在できない環境にしてやればいいわけです。
コロイド粒子は電荷を持っているのです。
電荷があると、たいていはプラスかマイナスの同じ符号に帯電しているため、粒子同士が反発しあって微粒子のままで安定して存在しているのです。
つまり安定して存在できないようにするために、電荷をなくして粒子同士が反発できないようにすればいいのです。
コロイドの電荷を中和して粒子同士の反発をなくす役割を果たすのが凝集剤というわけです。
凝集剤が泥水中のコロイド粒子の電荷を奪うため、コロイドが不安定になって互いに集まって粒子が大きくなり、沈殿してくるのです。

凝集剤としては硫酸アルミニウムなどの無機塩のほか、ポリアクリルアミドなどの合成高分子化合物が使われていおり、それぞれに特徴があって用途によって使い分けられています。

 

テルナイトは泥水の凝集沈殿法として取り組んだ凝集分離は、現在では「鉄・石灰法」として確立しています。
ずいぶんいかめしい名前ですが、鉄といっても鉄の塊ではなく、塩化鉄(FeCl3) という無機化合物で、これが泥水の凝集剤として最も効果的に働きます。石灰(Ca(OH)2)は加えた鉄のほか、もともと泥水中に溶けている重金属類を不溶物として沈殿させる効果があります。これは作用からいって凝集剤ではなく、沈殿剤です。凝集剤としてはほかに有機高分子化合物も使われます。

具体的には図に示した流れに従って処理します。
鉄石灰法のブロックフローまず坑廃水を反応槽と呼ばれる容器に入れ、これに凝集剤などの薬剤を入れ、攪拌。すると溶けていた主として重金属類やコロイド状の物質が沈降して来ます。この状態では沈降物はふわふわとして分離しにくいので遠心分離機にかけて強制的に沈殿させて上澄み液と分離します。

こうして分離された水は、泥水を作るときなどに再利用されています。着色物質がなくなって見た目にはきれいですが、KClなどの塩分が完全にはとれないで残っているため環境基準をクリヤーできず、河川に放流はできません。

 

沈殿物はそのまま産業廃棄物として業者に引き取ってもらうのかというと、実際はかなり水を含んでいるのでそのままではトラックで運べません。そこで、セメントなどの固化剤を加えてある程度固めてから運びます。

しかし、残念ながら凝集法の欠点は、泥水構成成分のほかにあとから加えた凝集剤なども廃棄物になるということで、水をきれいにしようとすればするほど、凝集剤の添加量が多くなるので廃棄物も増えてしまうのです。

産業廃棄物の処理費用は、地域によって違いますが。さらに処理場までの輸送コストも高くなってしまいます。

 

もっと、廃棄物が少なくなる凝集分離法があればよいのですが、例えば主に高分子系の凝集剤を使って分離すると多少少なくすることが出来ますが、これだとどうしても泥水に含まれる着色成分を完全には除去できないのです。その上、高分子凝集剤を溶かすのに大量の水を必要とします。
テルナイトの技術は廃棄物が多くて処理コストは多少高いが、水は無色透明で塩分以外は除去されてきれいにできるということになります。
テルナイトの技術陣は、これに満足することなく処理水をさらにきれいにするとともに、廃棄物量を少なくするための研究に取り組みました。その結果できたのが、水分を蒸発させて泥水分を濃縮する方法です。

濃縮分離法

つまり、今度は水の方を分離しようというわけですが、坑廃水中の水をすべて蒸発させてしまうと、固形分が装置にこびりついたりして連続的に取り除くということができないので、蒸発させて回収する水の量は濃縮液が流動性を失わない程度にとどめる必要があります。

どれくらいの水を蒸発させるのかと言うと、装置の運転をスムースに行うには、もともとあった坑廃水の容積を1/5程度にするのが良いのです。これだと、たとえば1リットルの坑廃水を200ミリリットルに濃縮するから、800ミリリットルの水を分離することになります。

熱交換模式図水1kgを100℃で蒸発させるには539キロカロリーのエネルギーが必要です。
富士山の山頂では気圧が地上(1気圧=約1,013hPa)の2/3くらい(約670hPa)しかないから、水は87~88℃で沸騰してしまいますが、濃縮装置ではこれは好都合なのです。
装置では約1/4気圧くらいまで下げ、68℃くらいで水が沸騰して水蒸気に変わるようにしています。
また、熱交換に工夫をしてエネルギー消費量を最小限に抑えています。
(水を蒸発させるために加えた熱をそのまま装置の外に逃がすのではなく、冷たいものを暖めるのに利用するということ)

たとえば左の図に示すように、同じ量の50℃の水と20℃の水を混ぜると50℃の水は冷え、20℃の水は温まって、計算上は35℃になります。
実際には混ざり合っては困るからパイプを通して温度の違う流体を接触させ、温かい温度を冷たい温度に移動させます。その結果35℃になれば、50℃の水にするにはあと15℃あげれば良いので、外から加える熱が少なくて済むのです。

 

その分加えるエネルギーが節約できるというわけですが、実際の濃縮装置では蒸留部分は図のようになっています。ここでは、2箇所で熱交換をしています。

 

濃縮装置最初に、泥水を含む坑廃水(これを原水と呼ぶ)の加熱部分です。ここでは装置から出てきた熱水と熱交換して温度を上げます。
次に濃縮部分ですが、ここでは熱交換で温かくなった原水をスプレーで霧状にして細いパイプに吹きつけます。
このパイプは約2000本あって、それぞれの中を水蒸気が通っていて熱くなっており。原水がこれに触れると水が加熱されて水蒸気になり、パイプの中では水蒸気が逆に冷やされて水になります。
つまり、水 →水蒸気の蒸発熱分を水蒸気→水の凝縮熱で補っています。蒸発熱と凝縮熱は同じなので、理想的には熱の出入りがないというわけです。
このあと、パイプの中の水は最初に言った原水との熱交換で冷却されて装置の外に出ます。一方、蒸発した水分はヒートポンプで圧縮され温度が上昇してパイプの中に導かれるというわけです。

 

濃縮分離法による坑廃水処理の全体の流れは、図で示すと下のようになります。
濃縮装置の周囲のカッコ内数字は先ほどの濃縮液と蒸留水の割合を示しています。

 

濃縮法ブロックフロー装置から出てきた水は蒸留水だから再処理する必要はなく、そのまま再利用出来る上、さらに浄化処理を施せば河川等に放流することもできます。

濃縮された泥水の構成成分は固化して産業廃棄物として廃棄しますが、まだ水の方がはるかに多いため、さらに水と固形分を分離する必要があります。
濃縮液にFeCl3などの無機系凝集剤とセメントなどの固化剤を入れて凝集したあと、脱水装置で水を絞ります。絞った水はさらに浄化処理した後再使用し、固形物の方は産業廃棄物として処理します。

最終的に廃棄する量は坑廃水を直接凝集分離するより少なくなるし、処理水を放流することも可能になるからコスト的にもメリットは大きいのです。
でも、テルナイトではさらに効率的な蒸発方法と廃棄物の減容化を目指して研究に取り組んでいます。

鉄・石灰法を第1世代の廃泥処理技術とすれば、濃縮分離法は第2世代、そして現在研究開発中のものは第3世代の技術ということになります。

泥水のプロテルナイトの技術にご期待ください。

 

もし、分らないところやもっと知りたいことがあれば、遠慮なく質問してください。